覚書

キャラクターを掴むためにふと頭に浮かんだネタや、本編の番外とかをとりあえず書き溜めている文になります。実際に作品の中で使用することもありますし、没ネタや最終的に使わない設定になることも御座います。ただし、書き溜めた内容の著作権は捨てておりません
キャラクターの設定やシナリオ等は各本編、各登場人物の紹介内容、もしくは「しろ鯨のかふぇテリア」で紹介している紹介内容が”正”となります。ここで書き溜めているものはあくまでも絵でいう「ラフ」みたいなものとして、おまけ要素としてお楽しみください。
※執筆内容、書き留めた内容には年齢指定のものも包み隠さず記載しておりますこの文をワンクッションとして置かせていただきます


  • 覚書

    「何ニヤニヤしてるんだよ」
     そのように指摘されて朝日は我に返る。努に顔を向けるが、自宅のことを思い出し、また口元が緩んでしまう。
    「聞きたいか?」
    「聞きたくねぇけどとりあえず聞いてやる」
    「凪が可愛いんだぞ」
     ──はぁ
     そんな気がしたと、心の中で思いながら親友の話を聞く。
    「あんなに本邸で共に暮らしていたのにな。今になってもちょっと触れただけで頬は赤いし」
    「リア充爆発しろ」
    少し冷ために言い放つが、脳内がお花畑な男には効果なしだ。
    「ただな……」
     朝日はそこで言葉を詰まらせる。何かあるのか。努は続きを促してみる。
    「最近朝、直ぐに起きれないみたいだぞ」
    「それはお前が夜に……ちょ……ちょめちょめしてるからだろ!」
    「何恥ずかしがってるんだぞ童貞」
    「うるせぇ!」
     コントのようなやり取りはここまでにして、朝日は続きを言う。
    「まぁ、夜に可愛がっているってのもあるかもしれねーけど、それ抜きでも朝は少し元気が無いような気がするんだぞ。それに食欲もどこか落ちてるような気がするんだぞ。昨日は珍しくご飯を残した」
    「……お前の料理なのにか?」
     鷹司の家で食事を摂るときには朝日の料理を美味しそうに食べていた姿しか見たことが無い努は、食欲が無い凪は想像が出来なかった。
    「あと、ここ最近はずっと飴を舐めてるんだぞ。聞いてみれば口の中が寂しく感じる……とか」
    「はぁ……」
     ──口の中が寂しい……。
     残念な童貞脳は艶かしい男女の接吻を思い浮かべ始めてしまう。嬌声な喘ぎ声の妄想も始まった時、現実に戻るように必死に首を振った。


  • 覚書

     朝の冷たい空気が鼻を擽る。そっと瞼を開けてみる。最初に視界に映る木製の天井に懐かしさを覚えた。
     隣を見る。俺の片腕の中で気持ち良さそうに眠る恋人がいる。口は半開きだし涎垂れてるぞ。……ったく、警戒心も無いな。
     これから毎朝、この光景が見れると思うと嬉しくなる。
     二人の体温で温まった布団から自由に動かせる方の片腕を出し、凪の頭を撫でてみる。気持ちよさそうだ。
     満足したところで、彼女と向き合う形になるように体を横向きし、頭を撫でた側の手を凪の体に背まで回して引き寄せる。素肌同士が密着し、昨夜のことを思い出す。
     月夜に照らされたベッドの上で初めて凪を抱いた。俺の愛撫により少しずつとろけていく表情。恥ずかしがりながらも俺の動きに合わせて艶めかしく反応する体。互いに名を呼び合い、小さな喘ぎ声と必死な息継ぎが部屋を満たす。浅く挿れただけで甘い痺れが背筋を走り、残った理性にしがみつきながら時間をかけて男女の蜜を交わらせる。射精後の疲労感は心地よく、とてもぐっすりと眠りにつけた。
     目が覚めた今も心が穏やかだ。
     ああ、ずっとこの時間が続いてほしい。
     譲り受けたこの家で静かに“夫婦”として暮らしていくことを望んで──……。


  • 覚書

     彼女の手を取ればびっくりするほど手先が冷え切っていた。皮膚はふやけて細かな皺を寄せている。
     この寒い日に水仕事を任されていたのだろう。もう一方の手を重ねると、凪の表情は緩む。

     ──あったかいですね。

     もし彼女の口から言葉が出たらそう言っているだろう。
     いつになれば言葉が戻るのか。二十にも満たない娘にとってはあまりにも過酷で心が傷む。

     あの時、もっと早く辿り着いていれば……。否、もっと早くに見つけていれば……。

     少しでも、その傷が癒えてほしい。そう願って両手を重ねたまま、手の甲に額をつける。