覚書

キャラクターを掴むためにふと頭に浮かんだネタや、本編の番外とかをとりあえず書き溜めている文になります。実際に作品の中で使用することもありますし、没ネタや最終的に使わない設定になることも御座います。ただし、書き溜めた内容の著作権は捨てておりません
キャラクターの設定やシナリオ等は各本編、各登場人物の紹介内容、もしくは「しろ鯨のかふぇテリア」で紹介している紹介内容が”正”となります。ここで書き溜めているものはあくまでも絵でいう「ラフ」みたいなものとして、おまけ要素としてお楽しみください。
※執筆内容、書き留めた内容には年齢指定のものも包み隠さず記載しておりますこの文をワンクッションとして置かせていただきます


  • 覚書

     里見第二課一部隊。大粒の雨が窓ガラスを濡らす夜。朝日は部屋に備え付けられたソファにだらしなく横になった。朝は西に、昼は南に、帝都へ急いで戻って公務用の正装へ着替え、と五家で終わらない話し合い。夕食をとらずに里見へ戻れば山積みになった報告書と申請書。処理し終えればとっくの当に時計は次の日と差していた。
     同じ中央セントラルに鷹司家の住まいがあるとはいえ、この雨の中での帰宅は億劫に感じた。
     あぁ、こんな時に気が利くグラマーな美女がいたら、五感と欲は満たせるのに。
     珍しくも、そのような劣情が生まれる。

     穂たちとの旅を終え、世界を救った者として学院側で評価され、難関とも言われる七年生の最終考査を通過パスし、即戦力を期待されながら風導士補ふうどうしほとして里見へ入隊。二年の実務を積み風導士として登録後、父親である太陽が急死。家督を引き継ぎつつ、第一部隊の隊長としての役割も担う立場となった。当然、日に日にやることは増え、休む時間どころか睡眠時間も削られている。
     気が付けば仕事ばかりの日々になっていた。
     遊びたいという感情は全く湧かない。気を張り詰める毎日を過ごすうちに“楽しいと感じる心”はどこかへ去ってしまったようだ。
     腕に巻かれた通信機を起動し、画面に映り込む自分の顔を見つめる。いつからつまらない男に変わった?


  • 覚書

     心を空っぽにして六花から受け取ったヘアピンを穴に刺す。何度もイメージトレーニングをした通り、右に数回、左に数回、また右に数回ピンの先を奥の方をかき混ぜる。乾いた解錠音と共に枷は手首から離れる。
     足も支持されたとおりに穴の奥をかき混ぜ、同様に外れる。
     借金は完済し、思い残すことはもう何も無い。彼から貰ったもの、預かったものは全て引き出しの中にしまい込む。
     今、着ているものだけはいただきます。何も着るものが無ければそれこそ捕まってしまうから。
     自由を取り戻した隷代はコッソリと裏口から抜け出す。痕跡を残さないように使い捨ての薄紙で指紋を付かないように十分に配慮した脱出。
     神子の力を取り戻しているため、言魂の流れでヒトの気配は容易に感じとれるようになっている。こっちは大丈夫と信じ、何も持たず素足のまま抜け出していく。
     ──藁半紙に優しい字で書かれた彼女の文はクシャりと音を立てながら握る。天地創造の言葉は複雑で、中には風導士でも読めない文字があった。
     この男は違う。現王と同じ勉強をしていたこと。雇い主として彼女の日報を毎日確認することを日課としていたため、読めない言葉を数える方が少なくなっていた。
    「馬鹿野郎っ!」
     こみ上げる怒り。それは彼女に対してではない。好意を寄せていること、大事にしていること、一人の女性として愛していることを伝えなかった自身に向けたものだ。
     回答送る前に何か言われれば、そちらを信じる可能性が高い。ここは最も華やかで下町に比べれば治安もいい方だが、階級が上の者が発すれば嘘の情報がたちまち広がる世界だ。
     遠くの方でゴロゴロと音が鳴り始める。賢二に留守を頼み、税を連れて家を離れる。
     犯人を追うほどの速さで先ずは王都内を探す。どこかに隠れていればいいが。
    「主! 雨が降ります! 武官に依頼して彼女を探させれば!」
    「それは無理だぞ。武官の中に九条の息がかかったやつがいたら、何が起こるかわからねぇ」
     上空は雨雲に覆われ、稲妻の柱が二人の目に留まる。
    「……雷で良かったな」
     どこかに隠れていてほしい。そう願いながら二人は王都の外へ飛び出した。