覚書

 朝の冷たい空気が鼻を擽る。そっと瞼を開けてみる。最初に視界に映る木製の天井に懐かしさを覚えた。
 隣を見る。俺の片腕の中で気持ち良さそうに眠る恋人がいる。口は半開きだし涎垂れてるぞ。……ったく、警戒心も無いな。
 これから毎朝、この光景が見れると思うと嬉しくなる。
 二人の体温で温まった布団から自由に動かせる方の片腕を出し、凪の頭を撫でてみる。気持ちよさそうだ。
 満足したところで、彼女と向き合う形になるように体を横向きし、頭を撫でた側の手を凪の体に背まで回して引き寄せる。素肌同士が密着し、昨夜のことを思い出す。
 月夜に照らされたベッドの上で初めて凪を抱いた。俺の愛撫により少しずつとろけていく表情。恥ずかしがりながらも俺の動きに合わせて艶めかしく反応する体。互いに名を呼び合い、小さな喘ぎ声と必死な息継ぎが部屋を満たす。浅く挿れただけで甘い痺れが背筋を走り、残った理性にしがみつきながら時間をかけて男女の蜜を交わらせる。射精後の疲労感は心地よく、とてもぐっすりと眠りにつけた。
 目が覚めた今も心が穏やかだ。
 ああ、ずっとこの時間が続いてほしい。
 譲り受けたこの家で静かに“夫婦”として暮らしていくことを望んで──……。