Story 1

   一、

 長いため息をつきながら僕は机に伏した。瞼には二つの情景が浮かんでくる。
 一つは満天な夜空の下で白い息を吐きながら手を重ねた時。百年に一度の流星群と君の顔を映しながら「幸せな気持ちがずっと続きますように」と願ったものだ。
 もう一つは君と────別れ。行かないでとは言えなかった。目の前で“一つ”になって、思い出の言葉を紡ぎながら“世界”へ傷をつけた。
 あれから五年が経ったが少しだけ後悔している。僕がもっとしっかりしていたら。僕がもっと力があったら。そしたら、もしかしたら好きなものも大切なものも護れたかもしれない────
 風(時)は取り戻せない。そう言い聞かせて頭を上げる。
 予知夢で見てしまった。僕の大切な人(従兄弟)が僕以上に苦しんでいる姿が。
 運命からは逃れることができない。けれども行動次第では定められた“結末”を遅らせることができる……かもしれない。
 心身共に傷だらけになった旅。そこで学んだのは“出会いは偶然では無いこと”。必要だから出会える。巡り会えるんだということ。
 外国製の通信端末を数回叩く。数コール後、相手が応じる前に「今すぐ来て」とだけ伝え通話を切った。唐突の電話で困惑しているだろう。今回はそれが狙いだから問題は無い。
 来るまで少し想い出そうか……。懐かしくも、哀しくもあるあの旅を。